石井幸孝さん(3)新著「国鉄」寄贈

石井幸孝さん(3)から新著の寄贈をいただきました。

以下、石井さんからのメッセージです。

 このたび、『国鉄ーーー「日本最大の企業」の栄光と崩壊』(中公新書2714)を刊行いただきました。お手元にお届けいたします。

 永年、鉄道の仕事に携わってまいりましたが、国内外の複雑な情勢の中で,今また、国の鉄道はきわめて厳しい危機ともいえる状況に直面しています。本書は日本国有鉄道(JNR)の歴史を素直に振り返り、続く国鉄改革とJR.の未来を案じてまとめたものです。過去の教訓を活かして、発想の転換をはかれば、鉄道の未来は、我が国の発展に貢献できると考えています。
 
 ご高覧いただき、ご教示賜りますとともに、できれば、多くの方々にご理解、ご鞭撻をいただきたく、ご取材、ご広報のほどをお願いいたします。

 今後のご発展をお祈りいたしますと共に、これからも、ご指導、ご厚情のほどをお願いいたします。

敬具
令和4年8月吉日
石井幸孝 いしい よしたか ( yosishii@yahoo.co.jp )

太田正行さん(23)の同書 紹介記事

 母校創立百周年の2022年は、日本の鉄道開通150年にあたり、コロナ禍のなか様々なイベントが行われた。新宿高校三回生で九州朝陽会会長(JR九州初代社長)の石井幸孝氏が「国鉄」を上梓した。私事にわたり恐縮だが、私が高校を卒業した1971年、創立五十周年記念誌「五十年の歩み」の編集を手伝ったが、同年、石井氏は今回と同じ中公新書の一冊として「蒸気機関車」を上梓された。一鉄道ファンとして、全廃迫る蒸気機関車をより深く知ることができた。それから五十年後に上梓された本書は、戦後1949年から87年まで38年続いた日本国有鉄道、分割民営化後の35年間のJRの歴史をたどり、将来の鉄道の姿を描いている。まず、目次を示すことで、内容を概観する。

第1章 戦後の混乱と鉄道マンの根性
第2章 暗中模索の公社スタート
第3章 栄光としのびよる経営矛盾
第4章 鉄道技術者魂
第5章 鉄道現場と労働組合
第6章 鉄道貨物の栄枯盛衰
第7章 国鉄衰退の20年
第8章 国鉄崩壊と再起
終章  JRの誕生と未来

  とくに、技術者である著者が、国鉄時代に取り組んだ無煙化、動力近代化のためのディーゼル動車の技術開発・設計についてまとめた第四章「鉄道技術者魂」に興味を惹かれた。また、日本最大の企業「国鉄」職員、特に「本社採用学士」と呼ばれるキャリア組は、事務系・技術系に区分され、技術系は出身学部により「機械」と「土木」に分かれ、「機械」は車両の設計と製造、検査修繕する工作局と車両を運転する運転局に配置される。「車両屋」(工作局)の代表を石井氏とすると、「運転屋」(運転局)の代表は山之内秀一郎氏(4回 朝陽同窓会元会長)、また土木の代表は垂水尚志氏(15回 朝陽同窓会元会長)ということになろうか。JR九州社長時代には、工業デザイナー水戸岡鋭治氏を起用し、洗練された車両を続々登場させた。「ななつ星in九州」は鉄道旅行の楽しさを見直しさせるきっかけとなった車両であろう。第五章「鉄道現場と労働組合」を初め多くの章では、国鉄に長く在職された著者しか詳細はわからない内容も多く、マスコミ報道とは異なる視点を発見できた。終章では、著者の長年の主張である新幹線による貨物輸送とJR北海道へ国境問題、食糧自給のための路線維持を提言している。

  なお、かつて国鉄で働く六中・新宿高校同窓生には、「国鉄朝陽会」(「鉄道朝陽会」)が結成されており、定期的に会合をもっていた。

 著者の石井幸孝(いしいよしたか)氏は、1932年広島県生まれ、51年都立新宿高校卒業、55年東京大学工学部卒業し日本国有鉄道入社、開発期のディーゼル車両設計に従事した後、経営全般に転進、広島鉄道管理局長、工作局長、常務理事・首都圏本部長、九州総局長などを歴任。1987年分割民営化に当たってJR九州社長、条件の悪い会社経営を軌道に乗せ、1997年から2002年まで会長。

23太田正行 記